作り手のこと
一枚ずつ、紙へと漉き込む
「めぐる、手漉紙。」はすべて、障がいのある方の手漉きで生まれます。
一枚一枚、丁寧に丁寧に、ゆっくりと漉き込み、紙へと生まれ変わります。
出来上がりの不規則さも個性として大切にするのが「めぐる、手漉紙。」です。
障がい者の工賃格差は社会課題です。
ご存じでしょうか?
いま日本には約965万人ほど障がいのある方がおられます。
そのうち約9%の方は一般企業に就職し、その他の多くの方々は小規模作業所や就労継続支援施設など、いわゆる"作業所"と呼ばれる場所で働かれています。
そこは、1964年の東京パラリンピックを契機とした障がい者運動の流れをくんで日本各地に生まれた、障がいのある方の「働きたい」という願いを実現するための働く場です。
障がいのある方はそれまで、働く機会や場所もなく無権利の状態に置かれていたため、障がいのある方の働く場が生まれたことは、それだけでも素晴らしい成果とされました。
そのため数十年経過した今でも「労働の喜びを感じさせてもらえるだけでも有難い」と考えている家族や関係者は多いそうです。
ところが、それゆえに、1ヶ月毎日懸命に働いても、受け取るのは月1-2万円という低賃金が常態化しており、
それどころか家族は施設に利用料や食事代、送迎代などを月1-2万円支払っていることも多く、
現実的にはお金を払って働かせてもらっているという現実が、日本全国で当たり前のように見受けられています。
同じ時間、同じように働いても、健常者の給料に手が届くことはなく、やがて親なき後への不安にも繋がっています。
[就労継続支援B型作業所の平均工賃は月額24,141円(令和6年度) そしてA型作業所の平均賃金は月額91,451円(令和6年度)]
もうちょっと、給料、もらえないかな?
グループホームから作業所へと通う人はこう言われます。
「今は作業所の工賃と、障がい者年金を合わせて月8万円ほどで生活しています。でもグループホームの家賃・食費・お弁当代を払ったら消えてしまうんです。支給前になると缶コーヒー1本買うお金も残りません。もしも、工賃が4-5万円あれば月10万円を超えます。10万円あれば、もっと将来のこととか考えられるのに。」
5万円の給料を実現した施設の方は「働くみんなの生活が、変わってきたんです」と言われます。
「少しずつおしゃれに目覚め、身だしなみや清潔感にも気をつけるようになる。ファッションが整えば、そこから今度は外に出かけるなど、様々な行動につながり、生活圏や人生観さえも変化していった。給料5万円が一つの節目となり、次に8万円を超え出すと、一般就労へのチャレンジ、結婚、一人暮らしなど、将来への夢や人生の展望を口々に語り出した。そして大台10万円を超えると、働く態度が大きく変わった。[お金を貰っている]という責任が芽生え、自分はお客さまのために働くのだという気持ちが芽生え出したのだ」「今思えば、自分の意志で使えるお金を確保することが、彼らには必要だったんだと感じます」と。
2万円で仕事ぶりが変わる。
5万円で生活が変わる。
8万円で未来が変わる。
10万円で働き方が変わる。
なぜ障がいのある方に、「めぐる、手漉紙。」をつくっていただくのか?
私たちには「めぐる、手漉紙。」を通じて叶えたい夢があります。
それは、障がいのある方の賃金格差という社会課題を解決することです。
具体的には、「めぐる、手漉紙。」を漉いていただくことで、障がいのある方の工賃を引き上げることができたらと思っています。
そのために私たちは、同じ思いをもつ全国の作業所さんと協力しながら取り組み、共創していきます
「めぐる、手漉紙。」は、この社会課題と向き合い、よりよい社会の実現につなげるために今後も積極的に広げていき、行く行くは障がいのある方の希望のひとつになれたらと思っています。
参考文献:『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ』姫路まさのり(新潮社)
「障害者とともに働く』藤井克徳 星川安之(岩波ジュニア新書)